無角和牛

2022年12月22日

無角和牛が目指しているのは『未来に残したい牛』

昨今の輸入穀物の値上がりなどによる生産コストの上昇によって、持続可能性について問われることの多い畜産業。
日本にはたくさんの牛がいますが、真に未来に残したい・残していける牛は一体どれだけいるのでしょうか。

そんな状況の中で、かねてより注目を集めている生産者がいます。
今回私たちは、その方にお会いするべく、熊本へ行ってきました。

訪れたのは、熊本県の阿蘇エリア。
熊本市内から目的地である産山村への道中、阿蘇の草原を走っていると、雪中でもへっちゃら顔で草や雪を食む牛たちに遭遇。
黒毛和種と、熊本系褐毛和種です。

阿蘇の壮大な自然と、黒色と茶色の牛たちが織りなす景色に、早速阿蘇の力強さを感じました。雪積もってても、放牧できちゃう牛たち、すごい。

珍しく雪の積もった12月の阿蘇の草原を抜けて北へ向かい、産山村に到着。
そこでお会いさせていただいたのは、井信行さん。
『井さんのあか牛』とまで呼ばれ、全国のシェフから高い評価を受けるくまもとあか牛の生産者です。
井信行さんについて詳しくはこちらから


画面中央に座っていらっしゃるのが井信行さん。
今回は無角和種振興アドバイザーである、東京宝山の荻澤紀子さんにも同行いただきました。

あか牛だけではなく、産山村のために何ができるか?を考えて色々と取り組んできたという信行さん。
「何事にも感謝という気持ちを忘れずに」という信行さんの言葉からは、産山村やあか牛への愛が常に感じられました。


色々とお話を伺う中で、我々が今、無角和牛を地域のもので育てることを目指していると伝えました。
その途端、さっきまでのまるで神様のように柔らかな温かいオーラに、職人のようなキリッとした雰囲気が加わり「地域内のものだけで育てる際の課題は、タンパク質の確保だ」と一言。牛飼いとしてのスイッチが入ったのを感じました。

そこからは、信行さんが自分でやってきた、地域内にあるものを無駄なく使い、牛たちに美味しく食べてもらえるように与える工夫や、その想いや苦労を伺い、循環型の畜産に取り組むパイオニアとしての姿に、一気に引き込まれました。

こちらが信行さんが牛たちに与えている県内産の大豆。
時間はかかりますが牛たちに美味しく食べてもらえるように、炒って、細かくして与えています。

「タンパク質さえ確保できれば、日本という国において牛を地域内のものだけで育てることは難しくない、できるはず」という信行さんの力強い言葉に、勇気をもらいました。

また、繰り返し言っていたのは「売ってくれる人がいるから、安心してこだわって育てることができる」ということ。
荻澤さんがしっかりと売ってくれるから、すごくありがたいんだと、信行さんと荻澤さんの信頼関係も伺えました。

牛舎にもお邪魔させていただき、そこでも信行さんの牛への想いをたっぷりとヒアリング。
牛たちの様子を見ながら、量を調節したり残った餌をきれいに掃除する必要性については特に言及されていました。
全ては牛たちのために工夫し、それがお肉にも現れて、多くのシェフに「井さんのあか牛」として評価されることにつながっているのだと、現場で想いを語る信行さんを見て実感しました。


井さんとともに記念撮影。
後ろの牛さんが信行さんに近づいているあたり、さすがとしか言えません。

これだけ愛情を持って牛たちと産山村のことを想う、信行さんによって生産される土地の個性を生かしたくまもとあか牛は、まさに「未来に残したい牛」。
今回の訪問では取り組みと、その精神をとても学ぶことができました。

最後には
「やればできる。できなければその時はやり方を間違えているだけだから、やり方を変えればいいだけ」
という金言をいただきました。
産山村を出る頃には、すっかり信行さんのファンに。

信行さんの想いは、息子さんである雅信さんにつながっています。
その様子は、また次回。

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